石の特殊効果について
鉱物に見られる特殊効果は光によるものです。
光は波長です。
波長も様々で人間が色として判別できるのが可視光のみです。可視光より短い波長だと紫外線、長い波長だと赤外線でどちらも色として判別は不可能です。
可視光はスペクトルの7色から出来ていて、全て混ざり合うと白い光として目に映ります。可視光の波長の長さによりそれぞれの波長を脳がひとつの色として認識します。
物体は光を反射・透過・吸収のどれかを行いその結果、色として人の目に映ります。反射された光のスペクトルは一色ならその色、複数なら黄色+青だと緑というように混ざり合った色として目に映ります。
全部の光を反射すると白に映ります、逆にすべてを吸収すると黒に、反射も吸収もされなかった光は透過されます。
透過された光は物体を出るときに反射角が臨界角を越えると内部全反射し、光は分散されてスペクトルとして目に映ります。(ブリリアントカットをした時に見られるファイアがこれです。)
キャッツ・アイ効果(シャトヤンシー chatoyancy)
猫目効果
針状の結晶が一方向に発達している石をカボションにカットすることにより、その方向と垂直に線上の光が出る効果です。
コランダムにおける針状結晶はシルクと呼ばれる微細なルチルによるものですが、他の石の場合はトルマリンなどもっと結晶が荒い鉱物であったり空洞(チューブ)だったりします。
スター効果(アステリズム asterism)
星彩効果
針状結晶が2方向、または3方向に発達した結果 カボションカットにすると十字やアスタリスクが浮かびあがります。十字スターを示すのはダイオプサイト、エンスタタイト、ガーネットが代表的です。市場で見かける黒字に銀の十字が浮かぶ石はだいたいダイオプサイトでしょう。明瞭すぎるスターは合成を疑うべきでしょう。リンデンスターなど細く綺麗すぎるスターは怪しいです。また、見た目的に不対称や二重など不自然な星は人工的に添加させたものの可能性もあります。普通のアステリズムは反射光で石の表面に浮かぶ「エピ・アステリズム」ですが、ローズクォーツのスターだけは特殊で光を透過させることで星がでる「ダイ・アステリズム」です。
アベンチュリン効果(aventurescence)
星彩効果
小さな結晶片が石に内包されることにより、キラキラする効果です。グリーン・アベンチュリンの雲母やブルー・アベンチュリンのデュモルチェライト、サンストーンのレピドクロサイトなどが代表的です。人工的にこの効果を模しているものはゴールド・ストーンとブルー・ゴールド・ストーンで合成ガラスの中に銅片などを混ぜています。
イリデッセンス(iridescence)
光の反射による特殊効果
レインボー・オブシディアンやレインボー・ガーネット、クラックの入った水晶やカルサイトなど、シャボン玉や油膜に見られる虹色は薄膜反射によるものです。また石によってオパレッセンス(オパール)、ラブラドレッセンス(ラブラドライト)、アデュラレッセンスまたはシラー(ムーンストーン)など呼び方やメカニズムが多少違います。
遊色効果(play of color)
モザイク状の効果
オーロラと同じで、光の回折によるものです。微細なシリカ結晶が規則正しく並ぶことにより、光をいろいろな方向に反射してこの効果が出ます。シリカの大きさ、配列により異なった色が出ます。オパール化してまだ浅い石は青系の遊色が多く出、長年経った石は赤が出ます。後者の方が価値は高いとされていますが、アメリカでは青緑系が好まれたる傾向もあり様々です。赤く見えるのは太陽が赤く見えるのと同じく、光の波長より大きい粒子による散乱であるミー散乱によるものです。
変色効果(change of color)
光源により微妙に光の吸収が異なる為に私たちの目に違う色に映る効果で、白熱灯下で赤系、自然光下で緑系に見えます。 これは微量に含むバナジウムが黄色のスペクトルを吸収するために、青味が強い太陽光では緑に赤味が強い白熱灯下では赤に見えるのです。アレキサンドル石、カラーチェンジ・ガーネットやサファイアなどがこの効果を示しますが、劇的な変化を見せる石は稀です。ソーダライトの一種であるハックマナイトは紫外線を吸収することにより変色を見せます。アレキタイプの光源による変色ではなく、UVを当てた後暫くはピンク~紫に徐々に変色し、照射をやめると徐々に色が戻るという特殊な変色を見せます。
多色効果(pleochroism)
見る方向によって色が異なって見える性質で、石によってはまったく違う色に見えます。変色とは間違えないように注意が必要です。結晶には方位性があり、方向により光の吸収が違う為に色が異なって見えます。等軸晶系(ダイヤモンド、ガーネット、スピネルなど)の石、非晶質のもの(ガラスやオパール、有機質の石)は多色を絶対に示しません。それ以外の石でも必ずあるわけではありませんし、透明でなければ観察できませんが、観察できれば石を判別する大きな手がかりとなります。劇的に色が異なって見える石は、アイオライト(濃い青、透明)、アンダリューサイト(茶色、緑)を筆頭にタンザナイト、サファイア、ベニトアイトなどが代表例です。