日本古来の知恵
日本人は昔から水による癒やしの効果を知っていました。例えば、日本庭園には竹で作られたししおどしという仕掛けが置かれています。ししおどしは竹筒をシーソーのように真ん中で固定し、その一方に水を流し込むようにしたものです。筒に一定量の水がたまるとその重みで片側が下がり水が流れ出ます。すると、反動で竹の反対側が下がり、下に置かれた石に当たってコーンという風情ある音を響かせます。もともとは鹿やイノシシを追い払うために作られたものですが、今では日本庭園の風流を表す音の装置として使われています。
もう一つ有名なのが水琴窟です。お寺の庭や日本庭園の土の中に素焼きの甕を埋め、上から水を注ぐと水滴が中の空洞に落ちる仕掛けです。水滴が落ちるたびにシャラン、シャランという涼やかな音が響きます。この音にはリラックス効果があるといわれ、仕事やストレスなどで乱れた心に落ち着きを取り戻し、癒やしにつながるとされています。最近ではホテルの玄関などにも設置され、ひしゃくで水を流し入れて気軽に音を楽しめます。
実は、この水琴窟の音を再現できるように作られたのが、水琴鈴なのです。なぜ鈴なのかというと、鈴の音は邪気を払うと信じられているからです。神社にお参りすると拝殿の天井から長い綱が下がり、その上には鈴が取り付けられているのを目にすることができます。お参りをする時には、この鈴を鳴らしてからお辞儀をしてかしわ手を打ちます。この作法には鈴の音で参拝者を厳かな気持ちにするとともに、邪気を払うという意味があります。巫女さんが神社で神楽を舞う時に、手に持った鈴を鳴らすのも同じ意味からです。つまり、水琴鈴は日本古来の知恵を生かし、場を清める鈴の音と心を癒やす水琴窟の音を一つにした優れものなのです。
高周波の音が効く
人間は低周波の音を聞くとストレスを感じます。例えば街中の喧騒は人が捉えることができない低周波の音をかなり含んでいて、ずっと聞いていると、知らないうちにストレスがたまり、頭痛がしたり、イライラしたり、疲れを感じたりします。
一方自然の音、例えば水の音や小鳥のさえずり、秋の虫の鳴き声などには高周波の音が含まれています。高周波の音は脳がリラックスしている時に出す、アルファ波を発生させる働きがあるといわれます。そのため、高周波を含む音を聞くと心が落ち着き、疲れが癒やされリラックスする効果があるのです。リラックスすると自律神経が安定し、夜になると自然と眠くなり、朝はシャキッと目が覚めるようになるなど、生活のリズムが整います。生活リズムが整うと不眠が解消され、熟睡できるので疲労からの回復が早まります。疲れが取れてリラックスした状態になると、血液やリンパの流れが良くなります。その結果、体内の老廃物が排出され、免疫力がアップし、風邪やウイルスなどへの抵抗力が増すという好循環が生まれるのです。
とはいえ、都会の真ん中やオフィスの中で自然の音を聞く機会はあまりありません。まして水琴窟を持ち歩くことも、頻繁に聞きに行くこともできません。そこで、考案されたのが水琴鈴です。水琴鈴のシャラン、シャランという優しい音には、高周波の音が含まれています。つまり水琴鈴は、自然の音を持ち運びいつでも聞くことができる、ひいては健康な状態へと導くとっておきのアイテムといえます。
水琴鈴の効果と選び方
水琴鈴には普通の鈴にある穴や切れ目がなく、閉じて中が見えないようになっています。中には金属の玉が入っていて、この玉が内側に掘られたたくさんの溝に当たって、水琴窟と同じような高周波を含んだ音を出す仕組みになっています。鈴が閉じているので、繊細でやわらかく耳に優しい音を出すことができるのです。
水琴鈴をカバンや身の回りのものにつけておけば、通勤や通学、ランチタイムなど何気ない時に音が鳴り、その音をきっかけにして自分を取り戻し、心の乱れをリセットできます。仕事や勉強において大事な場面で焦ったり、慌てたりすることがなくなり、集中力が高まりミスを減らす効果が期待できます。
水琴鈴は、街中のショップや通販サイトで売られています。真珠やハート、水のしずくをかたどったものなど形もさまざまです。色も金色から青や赤のパステルカラーなど豊富で、クリスタルやパワーストーンを埋め込んだキーホルダー型のものもあり、選ぶのに迷うほどです。水琴鈴は、鈴の大きさや素材、中に入っている金属の玉の大きさなどによって音色が異なるので、自分が心地よいと感じる音を出すものを選ぶのがポイントです。価格も求めやすいものが多く、いくつかそろえてその日の気分によって使い分けることもできます。
神社で売られているものには、金運を高めたり、縁結びなどのご利益をうたっていたりするものもあります。水琴鈴の音を聞いて心地よさを感じストレスが減れば、心にゆとりが生まれ表情も豊かになって、日々健やかに過ごせるようになるでしょう。
