石の取り扱いについての留意点

石の取り扱いには注意をしなければいけない物が存在します。購入したけど品質が落ちてしまった、破損してしまったということにならないように気を付けましょう。

石の取り扱いについての留意点

強度の問題

硬度は石の引っかきに対する強さで、こすり合わせた場合、硬度が低い方だけが傷つきます。
硬度が低い石はもちろんですが、硬度が異なる石を一緒に保管したりすると弱い方に傷がつく可能性や同じ硬度の石でも衝撃で欠けたりする場合があります。
また、衝撃に対する弱さや、結晶の方向性により何方向かに原子の結びつきが弱く割れやすい劈開(へきかい)という性質も注意するべきでしょう。

硬度が弱い石(硬度6以下)
6:ムーンストーン、ラブラドライト、アマゾナイト
5~5.5:アパタイト、ソーダライト
4~4.5:フローライト
3~3.5:カルサイト セレスタイト、ハウライト、ロードクロサイト
2:セラフィナイト、セレナイト

紫外線による褪色

着色中心color centerと紫外線による褪色(たいしょく)
【着色中心】
1.放射線の影響で原子構造の一部が壊され、原子が不規則に並んでいる不安定な状態になる
2.安定する為に一定の光の波長を吸収
3.残りの色がその石の色として目に映る

【紫外線による褪色】
4.紫外線に当たる事により、不安定な分のエネルギーを補充
5.一定の光の波長を吸収する必要がなくなる
6.着色要因がなくなるために、色が薄くなる。

アメシストは天然の放射性物質により原子の一部が抜け落ち、その分のエネルギーとして可視光の黄色を吸収するために紫に見えます。これは着色中心(カラーセンター)という着色要因の一つで、ブルートパーズやブルーダイヤモンドなどのように人工的に放射線を当てて色を変えることもあります。
強いエネルギー源である紫外線を長く当ててしまうと、原子が抜け落ちた分のエネルギーを補完してしまうために着色要因を消してしまい、元の無色透明に近くなっていってしまいます。
また放射線を浴びさせる、若しくは自然に浴びることで色は戻ります。この例とは逆に、紫外線により分子構造が壊されるために褪色していく石もあります。

紫外線に注意する石:アメシスト、ローズクォーツ、クンツァイト、Fタイプのトパーズ、ターコイズ、ロードクロサイト、ハイタイプ・ジルコン(深緑以外)

酸に弱い石

汗に気をつけた方がいいのは真珠や珊瑚の有機物やトルコ石などが挙げられます。ペリドートは汗くらいなら大丈夫ですがヘアスプレーやお酢には注意が必要であり、炭酸塩鉱物は酸に溶けやすいのでさらに注意が必要です。
マラカイト、アラゴナイト、ロードクロサイト、アズライト、カルサイトなどが該当します。

水に弱い石

ラリマー、真珠、ターコイズなど
気をつけたほうがいい石:ラピスラズリ、ロードクロサイト、セラフィナイト、染めメノウ、ハウライトトルコ
ラピスラズリやロードクロサイトなど硬度補強の為に無色樹脂が含浸されている石は樹脂が抜け落ちますし、染色されている石は色が抜け落ちるか変色しやすいために注意が必要です。水溶性の石(岩塩、胆礬、モットラム鉱など)の場合、水はもちろん、湿気にも気をつけましょう。日本は湿度が高いので、水溶性の石を綺麗に保管するのは難しいです。

熱に弱い石

オパールやパリゴルスカイト、ターコイズなど水分を含む石は、乾燥を避けるべきでしょう。

乾燥に弱い石

真珠や珊瑚、ジェットや琥珀など有機質の石、ターコイズ、セレナイト
ターコイズやハウライトなど硬度に不安があるために樹脂を含浸している可能性のある石は樹脂が溶け出してしまう可能性があります。水入り水晶などは内部の水が膨張してひびが入る恐れがあります。

モース硬度

モース硬度とは石の硬さをわかりやすくした基準です。ひっかきによる強さで1~10の数字に鉱物を割り当てたもので、相対的なので数値間の硬度は比例していません。
下の表を見て分かる通り、ダイヤモンドとコランダムの硬さは3倍以上も違うのです。数値的な硬度を表すにはヌープ硬度というものがありますが、一般的ではありません。
また、硬度は靭性(じんせい)とは別ですので硬度が高いからと言って衝撃に強いとは限らないというところに注意が必要です。ダイヤモンドは完全無欠なイメージがありますが、原子の結びつきが弱い方向が一方向あるためにハンマーで衝撃を与えると割れてしう劈開(へきかい)(クリベージ)という性質があります。
逆に、ネフライトは硬度6しかありませんが繊維状結晶が複雑に絡み合っているために粘り強く 簡単には割れません。モース硬度の優れているところは、よく知られている石を多く使っているところです。破壊検査になってしまいますが、もし、何も用具を持っていなくても石同士をこすり合わせれば 鑑別の手立てになります。
また、爪で傷つくかナイフや釘で傷つくかでも手がかりとなります。一般的なナイフや釘の鉄は6なので5以下の石は傷が付けられます。 爪の硬度は2.5なので白色半~透明石で爪により傷が付けば、水晶でも方解石でもなく石膏の可能性が高い、など目安となります。ナイフで傷が付かなければ石英の可能性が高くなります。(長石は6ですがわずかに傷が付きます)

                                                                                                                                                                               
硬度和名英名硬さ(Hk)
1滑石タルク渋谷
2石膏ジプサム32
3方解石カルサイト135
4蛍石フローライト163
5燐灰石アパタイト430
6正長石オーソクレース560
7石英クォーツ820
8黄玉トパーズ1340
9鋼玉コランダム2100
10金剛石ダイヤモンド7000

※空気中の塵には石英が含まれていますので、7より下の鉱物は空気中で僅かな傷がついてしまうということになります。

靭性

粘り強さのことで、衝撃に対する強さです。微細な結晶が絡み合っている翡翠は靭性がずば抜けて高いです。その点だけで言えば、ダイヤモンドよりも強い石ということになります。劈開性がある石は靭性が弱いということです。劈開性がなくても圧力や衝撃で割れ、欠けは生じます(裂開)

劈開性

原子と原子の間の結合が弱く、割れやすい性質のことです。
衝撃により、一定方向にスパッと割れてしまいます。劈開面はフラットで真珠光沢や薄膜反射により虹色を示すこともあるので、分かりやすく、石を判別するのに有力な手がかりとなります。この性質がない石もあります。割れやすい方向は石により異なり、劈開性の強さも石により差があります。
一般的に、なし、不明瞭、明瞭、完全の4つで分けます。
明瞭、完全な石は衝撃に気をつけるべきでしょう。
特に、カルサイト、ロードクロサイト、トパーズ、ムーンストーンなどです。ダイヤモンドは4方向に完全なため、硬さが物質一でも衝撃には弱いです。ロードクロサイトは硬度が3.5と低い上に、3方向に劈開性がありますので特に気をつけましょう。

裂開

方向性のある割れである劈開に対して方向性のない欠けや割れのことを言います。
圧力や衝撃などによりどの石にも起こりうることです。劈開面と異なり、断口は貝殻状や針状などガタガタなことが多いです。水晶など劈開性がない石でも、内包物が多い石は割れやすいです。原石と母岩の間ももちろん衝撃で離れてしまう可能性があります。